人間・失格

恥の多い生涯を送ってきました。
という大層な序文から始めようと思う。
女として生まれ、ほぼ齢20になろうとしている。私はこれまで何回も死のうとした。特段醜い容姿に生まれたわけでもなく、人に馬鹿にされるような考えをしているわけでもなく、漫画のように酷い家庭環境に生まれたわけでもなく、いじめをうけるようなこともしたわけでもない。ただぼんやりと死にたいと思うことが多々あった。私はこれまで沢山の人と出会い、人間として人を尊敬し、なんとなく人とセックスをした。しかし尊敬は嫉妬に変わり、なんとなくの男女関係は肉体関係へと変わっていく。あの子は私よりここが優れている。だがあの子は私より馬鹿だ。あの子は私よりブスだ。それを唱えて私は深呼吸をして安心をする。気持ち悪いほど鳴ってる心臓も落ち着く。人を見下すことでしか私は能がないのだ。見下すことに疲れた時はLINEを見て適当な男に声をかけて泥酔してセックスにもちかける。男は単純だ。ある程度可愛くてスタイルが良かったら誰でもいいんだろう。500ミリのストロングゼロを調子に乗って一気に流し込む。胃が熱くなり頭に霞がかかる。そして猫撫で声で「酔っちゃったぁ」と耳元で囁いたところで大体私の記憶が無くなっている。寝て起きたら全裸で枕元には使われたコンドームの空き袋と男の寝息が聞こえた。大体いびきがうるさかった。ある子に「なんでセックスがそんなに好きなの?」って問われたことがある。セックスという行為も好きだが一番私が必要としているのは承認欲求だろう。あの男が射精するには私が必要なんだろう? あの男が幸せになるには私が必要なんだろう? それなら私がここにいていいんだろう? ……と化粧の落ちた顔でトイレにこもってゲロを吐く。二日酔いでもなんでもない。気持ち悪い男にキスをされた感触が頭に過ぎるのだ。ふと鏡を見るとキスマークがつけられていた。お前は俺の所有物ってか。さっさと性病でもかかって死ねばいい。喉奥に手を突っ込んで胃液を便器に出す。口の中が酸っぱくなりまたゲロを吐く。セフレと連絡が取れなくなったら適当なおっさんに抱かれて始発で帰って死にたくなりながら歩いて帰っていた。始発で帰ると小学生が集団登校をしてた。アイツらを見てるだけで胸が痛くなる。自分の未来がキラキラしてますよっていう笑顔が順序よく並んでやがる。数十年前は私もその一人だったのになんでこうなっちゃったんだろう。10年くらい経って改めて思ったのは生きるって本当に難しいし、大人になるにも子供の頃に思い浮かべたようには簡単ではない。いつか母のような大人になれると思って母と同じ銘柄の煙草を吸った。母が使うライターの付け方が分からなくてチャッカマンでつけた。熱い煙が口いっぱいに流れ思わず噎せた。咳が止まらなくなった。肺が焼けると思った。生まれて初めて出来た彼氏に「煙草辞めないと、別れる」と言われても私は隠れて吸い続けた。煙草を辞めたらどうすれば大人になれるのだろうか? 子供を持てば大人になるのだろうか? そう思い私は当時の彼氏とセックスをして中出しを強要させた。妊娠はしていなかった。19歳の時の私は大人に選ばれなかった。その頃から煙草の量が多くなった。煙草を吸っている時が人間らしく生きていて、セックスをしている時が一番死んでいる。まるで社会から宙ぶらりんのようだった。どうやら彼氏は私の依存が重荷だったらしい。二ヶ月を過ぎたくらいで壊れはじめた。私が泣いていても気にかけなくなって、精神がおかしくなって倒れた。救急車で運ばれた。深夜の裏路地に彼氏の荒い息だけが聞こえた。私はただ闇雲に泣いた。どうすればいいかも分からなくて知り合いが救急車を呼んだ。倒れた理由はストレスだったらしい。私の存在が負担になっていて疎ましくなっていて三ヶ月で別れた。理由は「これ以上一緒にいると死ぬんや。お前は俺を殺したいんか?」と言われた。私はもう死んでいるのにお前は生きようとするのか? 死にたくなったので首を吊って死んでやろうとした。さっぱり死ねなかった。泣きながら昼間から歩いた。靴が脱げた。煙草に火をつけた。あの時付け方も分からなかったライターは今はもう簡単につけられるようになった。涙で前が見えなかった。彼氏に渡した合鍵は返されていた。一人でも狭いと思っていた七畳の部屋は広く感じた。別れた日から私は不眠症を患った。いくら寝ようとしても寝れなくなって酒に手を出した。酒を浴びるように飲んだ。ゲロを吐いた。煙草が消えると煙草にまた火をつけた。学校は泣き腫らした目で行っていた。私の数少ない依存対象がいなくなった。彼氏に復縁を持ちかけても「お前はもう俺に近付くな」の一点張りだった。ずっとなりたがっていた母親に泣きついた。すると母は「私に頼るな、お前でなんとかしろ」と私を突き放したのだ。ついでに縁を切られた。頭が空っぽになった。依存対象が本当にいなくなった。私を愛してくれる人がいなくなった。自分なんてどうでもいいと言っていた自分が一番自分のこと愛していた。自分に愛される自分が好きなのだ。他人に愛される自分が好きなのだ。愛してくれない他人など興味もなかった。裏切ってきた他人など死んでしまえばよかった。だから裏切った他人を憎んだ。死ねと願った。尊敬していた当時の彼氏は落ちる所まで落ちた。私は喜んだ。私のことを捨てたお前はクズで、お前のことを捨てようとしてなかった私は今愛されている。その事実が私を幸せにした。皮肉にも私は性格が悪いのだ。人が落ちそうになったら落ちそうになってる様をゲラゲラ笑ってしまう。「お前がそんな所で落ちそうになってるのが面白いんだよ」って言ってしまう人間だ。誰よりも人間臭いといえばそうなってしまう。でも人間臭いという一括りではなく、なんといえばいいんだろう。多分、必死に生きてるんだろうな。必死に生きてきたからこんな人間になったわけで……。こんな人間になったからずっと死に方を探してるわけで。もし今死ねるなら喜んで死ぬ。私の死は最終手段なのだ。昔見た祖父の死に顔は安らかだった。今思えばきっと人生を全うしたんだろうなぁ。20年間生きて私の人生は結構全うした気もする。でも孫の顔とか見たいわー、と母に言われそう。孫の顔見たところでなにもない。出産をすれば女は母になる。母になったところで私は私の母のようにしっかり生きられる自信はない。まず明日生きている確証もない。そんな私が新しい命を育んだとしてなにになる? 一人で生きていくだけでも必死なのにそれが二人になって三人になってしまったら……。私はもっとちゃんとした大人になれるのだろうか? 大人になるというレールはそこにあるのか? 母は私の歳にはもう私を産んでいた。私は未だ自分が分からないままずっとまだ生きている。母は自分を見つけたのだろうか。母は私をいつか許してくれるだろうか。一人娘なのに愛されたことなどない。母に「産んでごめんね」と酒に酔いながら言われた時私はどんな顔をしたのだろう。その時の私は何も答えられなかった。産んでごめんねって言われてしまったら私は生きることを否定されたと言っても同義だ。生まれてくる胎内を間違えたのだろうか。もしまた今母に言われたらどう返せばいいんだろう。「産んでくれてありがとう」「私はお母さんの子でよかったよ」……違うな。そんな教科書通りの言葉なんて私の考えではない。きっと「産まれてこなかったらよかったよ」って答えてしまいそうだ。そう答えたら母はどんな顔をするのだろうか。私はきっと泣いている。産まれてこなかったらこんなに苦しむこともなかった。こんなに馬鹿みたいな人生を歩まなかった。こんなに人を嫌うこともなかった。生まれなかったらよかった。別の私が生きてくれたらよかった。あの時死ねばよかった。あの時死んでいたら私は頭が悪いことを自覚しなかった。あの時死んでいたら母を悲しませなかった。あの時死んでいたらよかったなぁ。と思いました。馬鹿馬鹿しいな。馬鹿馬鹿しいけど……誰か私を殺してくれないかな、そして私で苦しんでくれ。それくらいの人間でいいや。生きててもしょうもない人間にしかならないし。しょうもない人間だからこそ何回も死のうとした。最初は腕を切っていた。見せびらかしたら周りの子が心配してくれた。嬉しかった。次は家にある薬を両手いっぱいにかきこんだ。ゲロを吐いた。何回も吐いた。母が心配してくれた。父は泣いていた。嬉しかった。次はカーテンレールで首を吊った。ちゃんと遺書も書いて死のうとした。確か内容は……私が死んで喜んでください。とかそういう卑屈まみれの内容だった。死ねなかった。でも少し意識が飛んでいた。無意識下で暴れたせいでカーテンレールが壊れたんだろう。私は死ななかった。遺書も無駄になった。遂に精神科に通うことになった。私がなんの病気かは言われなかった。母は「この子がそんな病院に通うことはない」と医者に言っていたらしい。そこの精神科は通えなくなった。私は学校を休みがちになった。その時はずっと起き上がれなかった。起き上がろうとすると体が拒否反応を起こしていた。ずっと熱が出ていて泣いていた。母は「あんたの心持ちが悪いねん」と言っていた。そんなこと言われなくても分かっている。でも出来ないからどうしようもないんじゃないか。その時はずっとネットの友達に家族の愚痴を言っていた。皆して「それはあなたのお母さんが悪いよ」と言ってくれた。その言葉で私は安心した。父は「お母さんはずっとあんなんだからお前が大人になって対応すればええねん」と言った。だから基本母と喧嘩しても私が折れた。母は私の意見に耳を傾けないからだ。私が全て悪いって母は思っているからだ。母は嫌なことがあると私のせいにするからだ。父は母の味方をするからだ。狭い家に私の居場所はなかった。だからずっと自分の部屋に引きこもって漫画を書いた。いっぱい人が死ぬ漫画を書いた。母はそれを見て捨てた。なんで捨てたのかを聞くと「嫌だから」と答えていた。私はゴミ箱を漁ってそれを取り返した。漫画を書くのを飽きると小説を書いた。小説は私の思ったことをそのまま見せてくれるから好きだった。母には私が書いた小説を一度も読ませたことはない。読ませたら「馬鹿みたいなこと書いて、もっとマシな物書きなさい」と言うからだ。祖母にも「小説家には苦難した人しか書けない。アンタは普通だから書けないよ」と言われた。勉強は出来ない。だって頭が悪いからだ。運動も出来ない。だって嫌いだから。絵も出来ない。だって私よりもっと上手い人がいるから。だから私は文章を書く道を志した。でも……でも、最終手段だった文章を否定されそうになっている私にはなにが残るんだろうか。それを考えると私はまた死にたくなってくる。私にはきっと……いや、絶対に、なにもないのだ。私という入れ物があってその入れ物は人が決めつけてるものが勝手に入れられていて、それでいっぱいになってるんだ。私が思う私は何もない。誰にでも優しい私。人のことを気遣える私。笑ってる私。何かを好きな私。誰かを好きになっている私。ここで息をしている私。全て他人から見た私でしかなくて、自分から見た私は何もない。そう考えたら息が苦しくなる。自分が本当に存在しているのかが分からなくなる。だから私はたった一人の他者に依存してしまうのだろう。その人は私のことを認めてくれて、私がちゃんと生きているって思わせてくれて、私のことを褒めてくれて……。その依存対象がいなくなったら私は死ぬ。私という存在が否定されるのだから。いくらメイクして服を着飾ってその人に合わせた曲を聴いてその人に好かれることをしてもその人に嫌われたら、私自身の存在が消える。それが一番怖い。すごく怖い。ははは。馬鹿だな。いつになっても大人になれない気がする。こんな人間、さっさと死んだほうがいいね。私はそう思う。皆はそう思う? そう思うって言って欲しいな。そうすれば決心がつく。他人から必要とされなくなったら私は生きる意味がなくなるから。子供のまま死んでさ、生まれ変わって……その時はお母さんが私のことをちゃんと愛してくれて、お父さんも私のことを見てくれて、皆から愛されて……そんな大人になりたいなあ。そんな大人になれるのかなぁ。なりたいなぁ……。

恋人はお前?

 

愛が恐れているのは、愛の破滅よりも、むしろ、愛の変化である。

 

 

まず、自己紹介だよな。

んと、俺の名前は白沢裕一郎、年は21、最終学歴は高卒。

今はフリーターで……、ちょっと前もフリーターしてて……っつーか高校卒業してからずっとフリーターだったわ。はっはっはー! ……ま、パチ屋とコンビニで必死こいて働いてるわけ。

熱中しているものもなく、将来の夢とかそういう希望もなく、毎日同じような日々を過ごしてるわけよ。俺ってマジで最悪で最低な時間の使い方してると思う。マジで。

ま、そうなったのは俺のせいだからどうしようもないけどさ。

年老いてるヤツとか偉いヤツらは、お前はまだ貧困に飢えてる少年少女よりかは幸せのほうだとか言うじゃん? なんかこう、毎日ご飯食べれて眠れて生きられて! って。

でもそれって俺にとっては普通なわけ。でも俺にとって普通なのは他の奴らにとっては可哀想なわけ。他の奴らよりは俺は不幸なんだ。だって高卒だから。だってフリーターだから!

それが学歴コンプの白沢裕一郎。

どう? 貧困に飢えてる少年少女ぐらいに同情できそう? しなくていいけど。

まぁこんな俺でも好きな人っていうか、愛してる人はいるんだよ。

例えが悪いけど純和風の黒髪の少女、黒川真理子。――と、同じコンビニバイトの明るい後輩、虹村幸広。

俺にとって二人は絶対必要な存在なんだ。

どっちが特別かなんて俺には絶対選べない。だって、俺は二人を、どっちも愛したいから。

でも、俺が普通の人間だったら、黒川真理子を一途に愛すべきだろう?

でも、俺がもし普通の人間じゃなければ、虹村幸広を愛してもいいわけだろう?

……でも、俺はどっちでもないから、二人には絶対に秘密。

裕一郎って囁かれても知られてはいけない。知ってはいけないサンクチュアリー。なんてね。

俺の、俺だけの、俺の、俺……、俺、俺の。

俺の。

俺。

おれの。

カオ。

顔。

顔。

顔。

顔。

顔、顔ーー、顔! 顔! 顔! 顔、顔!!

(顔はどこ?)

顔は?

顔が。

顔!

俺の、……顔、は、どこ?

 

 

「裕一郎!」

ハッと起き上がる。寝起きの虚ろな目に映るのはぼんやりときらめく明かり。目をこする。くるくると回る愉快な音と楽しそうな声に急かされて意識ははっきりしていく。

「んあ」

霞が取れて鮮明に見えた先にいたのは、退屈そうにジュースを飲む真理子だった。

「あ、ごめ、寝てた」口端に垂れていた涎を手の甲で拭う。

「もー、なんで寝てるんですか。いいですけど。いいですけど……ここどこか分かってるんですか?」

「どこ、って」

もう一度辺りを見渡す。

後ろにあるのは錆びれてキーキーと金属音が鳴っているメリーゴーランド。子供たちは金属音さえも聞こえないほど嬉しそうに馬にまたがって回っている。右にあるのは大きなレール。じっと見つめていたら人が嬉しそうに叫んであっという間にレールの先へと飛んで行った。

誰もが嬉しそうに幸せそうにいる場所。

上にあるのは。

上にあるのは?

上。

「カンランシャ、だ」

迫ってくる時間すら無視してゆっくりと回る観覧車。

ジェットコースターよりもメリーゴーランドよりも歩く人たちよりも遅く、誰に対しても等しく回っていく。

「ユウエンチ?」

「遊園地!」

「あー……、俺どんだけ寝てた?」

「たくさんですね」

「マジか。あー、なんていうかごめん。せっかくのデートなのに」

本当にどうしようもない。

遊園地デートを誘ったのは俺からだというのに、誘った本人がアトラクションにも乗らずにベンチに座って寝こけるとか、彼氏失格だ。

「……謝るんでしたら、アレ、乗りたいです」

真理子はベンチから立ち上がり、観覧車を指さした。

「いいよ、行くか」そう言って真理子の手を掴む。いつものように真理子の手はしんと冷たかった。

 

 

私の名前は黒川真理子です。

年は17、高校三年生、趣味はありません。

クラスでは人気者でもなく、お調子者でもなく、いじめられっ子でもなく、ただの普通の生徒です。

だから私がいてもいなくても教室はいつも通り。

だって人気者じゃないからいなくても惜しまれることはないし、お調子者じゃないからクラスの空気を気にしなくてもいいし、いじめられっ子だから人の顔色を窺わなくてもいい。

そんな人間が私、黒川真理子なんです。

でも私は、誰かの特別になりたいんです。

私がいつ死んでも素直に悲しんでくれるような、そんな特別です。

……中学の時は死ねませんでした。だって皆、自分のことで精一杯でしたから。人の死で一々感傷に浸ってられません。だから私はひたすら時間が経ってくれるのを待ちました。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずーーーっと、待ちました。

そしたら神様もようやく見兼ねてくれたんでしょうか。

やっと現れてくれたんです。私が死んで悲しんでくれる人!

その人たちは、裕一郎と、しずか。

あ、あだ名じゃ分かりませんね。

白沢裕一郎と、灰原しずか。

私にとって二人とも同じくらい大事な存在なんです。

裕一郎としずかは私が死んだら悲しんでくれる。だから裕一郎としずかが死んでしまったら私は悲しんであげなくちゃいけません。

ほら。すごく素敵! 素敵……。

素敵……、だけど、二人だけじゃ足りない。

私が死んでみんな悲しんでくれたらいいのにな。……なんて、わがままですかね?

 

 

次、どうぞー。という声と共に俺らは観覧車へと入っていった。

「キンチョーするな」

「うん」

小さい箱の中で二人は不揃いの呼吸を繰り返す。

息遣いが聞こえる。すー……すー……。息遣いに紛れて俺の心臓の音がヤバい。すげードキドキしてる。

「――あのね」

「あ、うん?」

真理子と視線が合う。そして体温へと流れ込んで溶ける。

溶けて……溶けて。

ガコン。

なんの音?

ガ、ガ。

「え?」

待ち望んでいた夕日がもう目の前にある。

大きな夕日が口を開けて嬉しそうに待っている。

(早く、こっちにおいでー。)

誰にも見られないように静かに手招きを振る。

(なんで、夕日が目の前に?)

(なんでだと思う?)

ガコン。

観覧車が揺れる。揺れてそのままずっと回り続ける。ガリガリガリガリガリガリガリ。観覧車は? 観覧車はどこに? ガリガリガリガリガリガリガリ……。

どこに行く?

(下に行くんだよ。)

がり。がり。がり。がり。真理子はずっと泣いている。どうして泣いているのか俺には分からなかった。がり。どうか真理子泣かないで。真理子。ガリガリガリ。ガり……。

「あ…」

 

夕日が逆さまだ。

 

ガリガリガリガリガリガリ

浮遊感が一気に襲ってくる。見ていた景色が浮かんでいく。どこに行く?どこに? もしかして、上? 下?

ガリガリガリガリガリガリ

橙の空が瞬く間に白へと飲み込まれていく。悲鳴。おちている?なんで? なんで。落ちる。落ちる。落ちる、落ちる、落ちる! 落ち、目、目が、目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

真理子はまだ泣いている。あぁ、そうか。俺ら、死ぬんだ。だから真理子泣いていたのか。あはは。は、ははは。真理子が死ぬとき、悲しんでやらないといけないのになんで悲しくならないんだ? あーあ、俺って薄情! あっはっはっはっは…………。

……そっかー、死ぬのか。

急に虚しくなってきた。まだ生きてしたいことが山ほどあったのに。

幸広にどんな顔して天国で待たなくちゃいけないんだろうか。

真理子もそうだ。真理子が死んだ後に一番悲しんであげないといけないのに。

本当、俺ってサイテーな人間だな。

どうか、どうか、神様がいるんだったら、真理子と幸広だけは幸せにしてあげてください。

俺は別に死んでもいい。だから神様! ――…って、神様がいたらこんなことになっているわけないか。ははは。

……。

あーあ。俺も幸せになりたかったなぁー……。

 

 

*『普段と何も違ってなかったのに』

 

ガリガリーッていうものすごい音がしたんです」

M市の遊園地で悲しくも起きてしまった観覧車での事故。

好天であった夕暮れ。遊園地に訪れていた人々は一瞬にして恐怖に凍りついた。現場辺りでは悲鳴が聞こえ、パニック状態に陥る人もいた。

夫婦で休日の休暇を謳歌しようと訪れていたM市在住の赤松大嗣さん(32)はちょうど観覧車に並んでいた。

「ひどい金属音がした。ガリガリーという音だった。もし自分が乗った観覧車があんなことになったら、と思うとゾッとする」

次のアトラクションへと向かおうとしていた高校一年生の青田柚香さん(15)は、「ガコン」という変な音で頭上を見上げた。

上には白い煙をあげている観覧車があった。その観覧車であろう破片が下へと落ちてきたらしい。

「一番上にあった観覧車があっという間に落ちてきて、すごく怖くてどうしようもなかった」

目の前で起きてしまった悲劇のフラッシュバックが起きてしまったのか涙をずっと流していた。

 

観覧車に乗っていた白沢裕一郎さん(21)黒川真理子さん(17)は現在も病院にて治療中である。

 

 

 死後に生まれる人もいる。

 

 

自己紹介、すればいいんすか?

えっとですね、俺は虹村幸広って言います。虹村なんであだ名がレインボーとかつけられてたんすよ。あ、年は19っす。

その俺、言いにくいんすけど、中卒なんすよ。んで毎日コンビニでバイトして、まぁ仕方ないことなんすけど……。

ここだけの話、先輩……あぁ、白沢先輩っす。先輩、よく高卒だからクズだーとかって自嘲するじゃないですか? アレ、俺すっげー苦手なんす。だって先輩なんだかんだ言って高卒じゃないすか、俺なんて中卒っすよ? 高卒でクズなら俺ってなんなんすかね?

……生きる価値なし、ってとこっすか? ハハハ。

いやまぁ高校は初めちゃんと行ってたんすよ、でもなんか俺、行きたくなくなって。アハハ、甘えっすかね。まぁ、甘えた結果がこれなんす。

因果応報とは正しくこれっすよ。おかげさまで毎日が代わり映えしない日々のできあがりっす。ほんとー、クソみたいにつまんねーっすよ。

……ていうか、そうか。白沢先輩のことが聞きたいんすね?

先輩はそうっすねー、いい人っすよ。こんな俺でも対等に扱ってくれるし、なんか俺でも生きていいんだーって思わせてくれた大事な人っす。

先輩とバイトの上がりの時間が一緒になったら二人で飯食いに行ったり、先輩の車でドライブに行ったり、人並みの幸せが俺にもやってくるんだって思ってすげー幸せになるんす。だから俺はもっと先輩と一緒にいたいなーって思うんすよ。

あぁ、今度先輩と約束してるんす。俺が見たがっていた映画でも見ようって。二人でご飯でも食べに行こうって。

こんなクズでどうしようもない俺ですらまだまだ幸せなことがあるんすよ。だからその、この幸せを俺は先輩と一緒にいられたらなぁって思えるんす。…………アハハ。ちょっと、クサかったすかね?

 

 

 しずかの名前は、灰原しずか。

19、大学では心理学を専攻してる。最近注目してるのは恋愛での行動原理。まぁこんなことはどうでもいいか。ごめんなさい。しずか、人と話すこと苦手……いや、苦手っていうよりは慣れていないだけかもしれない。だから大学ではいつも一人。一人は好きってわけじゃないの、でも話すことが得意じゃないから仕方ないでしょ。……仕方なくはないんだろうけど。

 その、しずかと真理子が出会ったのは半年前。SNSで気が合ったの。真理子は、自分が死んだら悲しんでくれる人を探していたんだって。変な子でしょ。しずかはネットですら自分の本心を言えない。言える真理子が羨ましくて、惹かれた。だからしずかが悲しんであげるって言った。そしたら、ありがとうって、言ってくれた。すごく嬉しかった。単純だけどしずかを救ってくれるかもしれないって思ったし、救ってあげなくちゃいけないなって思った。

 しずかは真理子が悲しくなったら一緒に悲しんであげなくちゃいけないし、怒ってたら一緒に怒ってあげなくちゃいけないし、嬉しかったら一緒に嬉しくなる。だって真理子はしずかを救ってくれるから。

 だから、神様。お願いがあるんです。

もし真理子が死ぬときはしずかも一緒に死なせてください。真理子はしずかと一緒がいいし、しずかも真理子と一緒がいいの。ずっと、一緒なの。

ねぇ、神様。聞いてるの?

 

 

* 頭部移植手術
頭部移植手術を試みた例は、古くからある。

――らは生きた人間の頭部移植を中国で実施する計画を発表し、被験者

は脊髄性筋萎縮症という難病を患っており、車椅子生活を余儀なくされている――とされた。

今回の被験者はM市の遊園地で観覧車での事故の被害者である白沢裕一郎と黒川真理子であった。白沢裕一郎が病院へと搬入された際には頭部が半分以上損壊していた。また黒川真理子は頭部以外が損壊していた。その様子を見た医者は白沢裕一郎の体と黒川真理子の頭をくっつける、という苦渋の判断をした。

 

10

 

目が開いた時にいた医者はすげー嬉しそうに大成功と言っていた。

目が開いた時にいたお医者さんはとても嬉しそうに大成功と言っていました。

観覧車が落ちて頭が吹っ飛んだあの時の俺と、今ニュースを見ている俺とでは全然違う俺になってたわけなんだよ。

観覧車が落ちて体が潰れてしまったあの時の私と、今ニュースを見ている私では全く異なる私になっていました。

俺は誰だったのかすら、じきに頭から離れていって――郎だったことも、あれ? 頭にあるこの名前、誰?

私が誰だったのか、とか次第に体から抜けてしまって、――真―であることすら、この人? どの人?

だって鏡を見たら、俺の体なのに顔は違うんだぜ。

だって鏡を見たら、私の顔なのに顔は違うんです。

俺のようで俺ではない。

私のようで私ではない。

体では真理子と幸広だって分かって好きでいるのに、頭が欲しているのはユウイチロウ? と根暗そうな女。

頭では裕一郎としずかだと分かって愛しているのに体が求めているのはマリコ? と頭が悪そうな男。

こんなのどうしろっていうんだ?

こんなのどうしろっていうんですか?

俺は誰を好きになればいいんだ?

私は誰を好きになればいいんですか?

鏡に映る俺は泣いている。

鏡に映る私は泣いている。

なんで泣いているんだ?

なんで泣いているんですか?

なぁ。

ねぇ。

本当の俺って、誰なんだ?

本当の私って、誰なんですか?

(俺は誰?)

白沢裕一郎。

(私は誰?)

黒川真理子。

誰?

お前は、誰?

(俺の恋人は、誰?)

(私の恋人は、誰?)

恋人はお前?

ファーストキスはドブの味♪

 待ち合わせにしていた仄暗い部屋に入ると、初対面の叔父さんが私を待っていたかのように下着一枚でベッドの上で嬉しそうに座っていた。

こっち、と手招きされ私は歩みを進める。その度に滲むように臭う汗臭さと獣のような生臭さ。鼻が曲がりそうになった。それを堪えて私は名前を叔父さんに言う。すると猫撫で声で、耳元で、生温い吐息で、可愛いね。と魔法を唱えてキスをした。

 


ファーストキスは、ドブの味がした。

小学一年の時、私は友達と近所の公園で遊んでいた。ブランコ、滑り台、鉄棒、砂場、どれもが私たちのものだった。

私たちのものになっているのは下校時間が早いからで、上級生が来た時点で私たちのものではなくなる。上級生が我が物顔でブランコを奪い取り、滑り台の上で喋り、砂の山を潰し、鉄棒で自慢げに前回りをする。それを私たちは死んだ魚の目でジッと見つめ、家へと帰っていくのだ。これが小学一年の私のルーティン。

 でもあの日はいつもとは違っていた。

いつも通り上級生から遊具を奪い取られて帰ろうとしたときに一人の上級生に呼び止められた。上級生の顔は集団登校の時に見たことがあった。名前は確か、ユウタくん。上級生のグループでも一人だけ浮いていて、大人から子供まで腫れもの扱いされている子。ニッと歯を見せて笑った時に一つだけぽっかり空いている穴が目についた。

友達は、なんでこの子が呼ばれてるんだろう。と思いユウタくんに聞いた。するとユウタくんは何も言わず友達を強く握る拳で殴った。子供は自分の力加減が分からないからこそずっと殴った。友達は顔が腫れ上がっていた。友達は遂に泣いた。するとユウタくんは殴るのを止め、その瞬間に友達は逃げていった。

友達の姿が見えなくなっても、ユウタくんはジッと私を見ていた。細い三日月の中に私の顔が二つ並んでいる。もしかしたら私もあの子みたいに殴られるかもしれない。怖かった。すっごく怖かった。だから私はその場から動けなくなっていた。

ユウタくんはクスリと笑って、可愛いねー……。って、私の髪を撫でた。砂まみれの指。私の頭上から砂が被さって口の中がジャリジャリした。奥歯でジャクジャクと砂を磨り潰す。奥歯でギュリギュリと唱えられた魔法を磨り潰す。可愛いねー、可愛いねー、って、魔法を唱えて、キスをされた。

ファーストキスだった。ドブの味がした。

唇を離すと歯の隙間から糸が引いていた。ドブの味がした。

糸を手繰り寄せて舐めた。ドブの味がした。

ドブの味しか、しない。ずっと、ずっと、ずぅっと、ずぅーっと、キスがドブの味がする。

 


今日も私は可愛いね、可愛いね、可愛いねー、ってずっと魔法を唱えられながらキスをされる。

私のキスの味はきっと、ずっと、これからも、おばあちゃんになるまで、灰になるまで、ドブの味なんだろう。

口端から顎へと糸が引いていた。唇を舌で手繰り寄せて舐めた。

いつも通りの、ドブの味だった。

 

 

平成生まれインターネット育ちの現代っ子


私の世界はスマホ一つで事足りる。ツイッターを見てインスタもついでに見てラインが来たら返信して、暇すぎたら動画を見る。前に述べたSNSである程度の人間関係と他人が何をしているかがひと目でわかる。

「バイトだるい」→「今日もこいつ働いてんなー」

「いまおきた」→「昼夜逆転してんなー」

「ひま」→「そっかー」という情報がすぐさま流れてくる。教授によると私たち世代は孤島なんたら~らしい。(うろ覚えですみません)それぞれが考えが独立していてー、情報はスマホ一つで分かるとかなんとか。私もその一人なんですけど。実際スマホをいじってるだけで一日が終わることもある。ちなみにスマホが出てきたのは私が高校になるくらい。中学生の時はガラケーで毎日メールをやり取りしていた。可愛い絵文字使って、人とガラケーの種類が被らないようにして、着信が鳴ったらすぐ携帯をパカッと開いてーっていう。不便な時代といえば不便ですね。ラインみたいに一言で返すわけでもないし、メアド聞き出すのにすごい苦労したし、ネットを見るってなったら莫大の金を親が払わされてたし、音楽を聴くってなったらわざわざCDを買っていたりもした。(CDプレイヤーで毎日同じ曲ばっか聞いてたなー、東京事変の能動的三分間があの時自分の中でハマってたりした)まぁなんだろ。スマホって偉大だね。それに尽きる。スマホなくなったら実際キツいし。そういうとこが現代っ子。そりゃそう。まだ20歳。平成生まれのインターネット育ちだもの……。

媒介変数(今聴いてる曲がそれなので)


最近めちゃくちゃ何かに追われてるんだ。何かってわかんないけど、めちゃくちゃ焦ってる。ぼけーって頭の中にある濁ったやつを吐き出そうとメモ帳開いて今書いたりしてるけど何も書けないんだよね。いつの間にかカーテンが外の光に照らされちゃって、新聞配達のバイクの音が聞こえる。嫌いだー、嫌い! 時間ってなんで置いてってしまうの? 机の上にある灰皿のタバコはどんどん積まれていくのに、壁は私の煙を吸い込んでいくのに、私は何も出来ない。無力すぎない? そういうもん? 生きてるってそういうもん? 嫌だなぁ。すっっっごく嫌。なにが嫌かっていうのは漠然としてるけどね。って思った。だから今から哲学的なことを調べちゃお。調べた。生きるってなに? って。生きるとは「生命の活動なんたらかんたら~」だってさ! つっせーー、うっせーってなる、所詮お前ら全員精子卵子のハーフのくせに、グチグチ言ってくんなよ、って。私は私で生きてんのに何かに追われてんのに、ずっとずっとずっとずっと呑気に生きてるお前らが嫌いなんだよ、毎日毎日ぼやーっとしながら今ある辞書を見て「これはこういう意味なんですね。すごく分かります!」って即答してる馬鹿共、見てるだけでむかつく。でも自分なんて辞書引いただけで満足する人間だけど。まぁ哲学者も偉い人も所詮、精子卵子のハーフ。そういうことなんです。あほくさ。あほくせえよ! 人間に生まれたからちゃんと生きなさい! って人生楽真っ当に生きてる? 生きてないよ。生きれてるわけないよ。もしさ、何が楽しくて生きてんの? って聞かれたらマジで答えられない。楽しくて生きてるもん? 面白かったら笑うけどそれって楽しい? 真っ暗闇の裏路地に街灯もなく座り込んでるだけです。私の人生の岐路ってそういうもんだし周りもそういうもん。いやそこはマイノリティになっちゃおっかなー! 私だけ真っ暗! 真っ暗なんですよー! ワハハ! 人生お先真っ暗! 何にも見えないからなにに襲われたかも分かんねぇ、幸せってブラックボックスだ。箱の中身はなんでしょうか? ってね。突っ込んでみないと分かんない。突っ込んでみて苦虫を食わされたような気分になるし、蛇にとぐろ巻かれちゃうし、手を突っ込んでたら後ろから刺されるし。ほんと、一握りだよなあ。霞食って生きてる方が幸せなんじゃね? とか馬鹿げたこと思った。それぐらいの幸せならありふれてるっつーの。愛して愛して愛してーありがとー、あー。ずっと同じ曲聴きすぎて頭がボゲーってする。もう五時ですね。本当に、人生楽しそうだな。楽しくねぇけど。全く楽しくねぇよ。小さな部屋に籠って隣の生活音が聞こえてさ、楽しくねぇわー。楽しいことを見つけるためにインターネットを見ても大体人の不満ばっかでフラストレーションが募る。お前らの不満見ても楽しくない。私の不満を見ろ。そして共感しろ。私はマイノリティでお前らはそれを羨望しろ! っていうね。まぁ全部適当なんですけどね。わー。私の人生すっごくー楽しそー。楽しそーですねー。楽しいですー。右向け右をしてるだけの人生ーすっごくたのしー。楽しい。楽しいわけないだろ。ばかみてー。左でも向いてろ。

 

20190302

 


もうすぐすると太陽が昇る。毎日昇ってくる。生まれてこの方昇り続けていて太陽は飽きないんだろうか。私なら飽きる。毎日毎日同じことの繰り返しで退屈で死にそうになる。(まぁ実際には地動説で過去に空論された天動説は否定されてるんですけど。)まぁ、それはそうとして。皆は人の目を見て話せる? ちゃんと人の目を見て自分の言いたいことをちゃんと話すことって。私は出来ない。幼い頃に「目を見てちゃんと話してよー」って友達に言われた。だから合わせた。顔が真っ赤になってオタクみたいに卑屈に笑っちゃった。ふひひ……って。自分でも気持ち悪かった。相手はそれを見て笑った。悲しいよりも先に馬鹿にされてるなって思って私は更に顔が真っ赤になった。その時何も言い返せなかった。馬鹿にするな! とでも言えばよかったんだろうか。うーん違うな。そういうことをしてしまったら友達も気分悪くしちゃうし……。多分ね「ごめんね、こんな人間で」って言えばよかったんだと思う。そうすれば相手も諦めてくれるし私も諦められる。本当に素敵で魔法の言葉だよね。自分がダメだって分かってたら相手も諦めてくれる。で、今は目見て人と話してるの? ってなるか。話してないよ。目見て話したら見透かされそうで怖いもん。私が今までどんなことして生きてきたか、話してる相手にどう思ってるか、全部がバレそうで怖いもん。ちなみに両親にも目を見て話せません。父親に怒られている時に「お前、目ぇ見てちゃんと話せ!」って怒鳴られて仕方なしに見たら父親はすごく泣いていた。それも怖かった。なんで泣いてたかって、まぁ、多分私死のうとしたんだろうなぁ。って。多分。思い返せないけど。でも泣き顔は鮮明に覚えてる。私のおじいちゃんの葬式でさえ泣かなかった父親が私には泣いてくれるんだーって思ってさ、その時多分私も泣いてたかも。あ、思い返せてきた。自分感情高ぶったらすぐ泣いちゃうんだけどさ、父親が泣いてる姿見て泣いちゃったんだ。そしたら父親……お父さんさ「死ぬなとか考えるな」って言ったんだ。私そんな良い子で生きてきたわけじゃないんだからさ、死にたいとか思ってもいいと思うんだ。だってもし今死んでもいいよって言われたら死んでもいいし。そのくらいの覚悟なのかな、まぁそれくらいで生きてる。欲を言えば20歳になる前に死にたかった。でも死ねなかったからとりあえず27歳くらいで死にたい。皆が死ぬ前に死にたい。誰かの葬式に出て泣きたくないもん。絶対泣いちゃう自信あるし、人の死ぬ姿とか見たくないし、お母さんとかお父さん、おばあちゃんが死んだら絶対自分も死にたくなる。だからその前に死にたいなーって……っていうのを酔ったらサラって話しちゃうわけ。そしたら皆悲しそうな顔で「死なないで」って言うんだ。あー私って皆にとってそういう人になったんだーって。人に死なれては困る存在にまでなったんだ。嬉しいなぁって思う。思うけど……もしこういう話をしてる相手が死んじゃったら私も悲しいよなー。悲しくなる前に死にたいよなー。ってなる。まぁ何回自殺未遂しようと死ねなかったから今生きてるんですけどね。あーあ。首、跡残らなくてよかった。あの時カーテンレール壊れなかったら死ねてたんだな。でもチョーカーつけたら息苦しくなって発作起こしちゃうけど。脳ちゃんと働いててよかった。でもODが癖になってて抜けられなくて脳みそ段々小さくなってきてるけど。あ、でも生きてんだよなー。あーあ。ちゃんと生きててよかったー。生きててよかったとは思うけど死にたいなー。生きてて楽しかったことなんてどうせすぐ消えちゃうし。あの時死ねばよかったな。そう思いますね。ははは。嘘。多分。多分ね。

 

 

20181129

 

人ってスゲー痛覚に襲われたら「ここで死んでいい!だから今の痛みを無くしてくれ!」ってなると私は思う。あれ? 私だけ? そうか。まぁ人には人それぞれの痛みって言うもんがあると思うよ。知らんけどな。はい。はーい……。近況話します。咳が止まらなさすぎて病院に行ったら「喘息の一歩手前かな~。タバコやめたらぁ?」と言われても尚タバコを吸い続けています。いやー。早死したいのか? えーん、まだ死にたくね~よ~。大器晩成を為してから死にて~よ~。大器晩成の使い道違ってたわ。スマン。日本語的にはー、やることやってからかな。やることやってねーけど! 全然やってねーけど!!! 部屋クソ汚ぇけど!!!エナジードリンクの空き缶転がってるけど!! いやそろそろまともな人間の暮らし、したいよね。言わば人の黄金。彼氏を作りクリスマスを迎えそうして熟してから結婚、というレインボーロード。なんつって! いや~マジな話なんていえばいいのかが分からんけど、自分のやりたいことで頭いっぱいで他人のことを考える比率がゼロなんすよ。お前らのことなんて考えてる余裕ねぇわ! 的な。そんな毎日だからこそ毎週真面目に受けてる授業だけがやけに印象に残ってやがんの。だってそれ以外基本同じ行動ばっかだからね。寝て起きて絵かいて小説書いてアニメ見てYouTube見て学校行ってバイト行ってのサイクルをぐるぐる繰り返しているだけ。もしかして自分だけループ入ってるか? って錯覚するくらいには同じような日々ですわな。学校行かなかったらろくに人と話さんし。自分の部屋だけが世界から取り除かれてポツンとあるようなそういう感じ。まぁそういう勘違いを直すのも自分次第だけどね。ま、直す気ねーけど。直す気ないし登校期間終わったらさらに引きこもるし、他人と顔合わすの2週間に1回~とかになりそうでワロタになる。実を言うと人と目線とか顔を合わせて話すことが苦手なんすよ。人と目を合わせたら自分がなに考えてるかを見透かされそうだし、顔を合わせて話したら自分の気まずそうな顔をしてるのがバレる。だからいつも顔を伏せて人と話してしまう。これ、引きこもりの常套句ネ。しゃーねーじゃん。キラキラ人種みたいに「友達と遊ぶの楽しい!」「早くこの子に会いたい!」「今日も飲み!」みたいなこと一応したいとか思うけどめんどくせーし他人と関わんのもめんどくせー時期に入ってるからどーも乗り気にならないのですよ。こういう時期が一年のうちに10回以上はくる。多分50%以上鬱病の見込みアリだね。あほくさ。自分のしたいことはそーいう人間から確実に理解はされんけど、自分だってそーいう人間がしてることは理解はできない。ケースバイケースっていうか、どっちもどっちですよ。これわ。人を理解しようという魂胆が間違ってる。いくら人を思いやって理解しよう! としてもどー足掻いても人間の根底は違うわけだから考えも違うし行動も異なってくる。人を理解しようとするな! とまではいかないけどももうちょい距離を置いたら? と思うことはありますね。いやこの言葉は誰に宛てた、とかではなく……全人類に宛ててに近いかな。だっていつもこういう日記書いてる時頭空っぽにして書いてるもんね。あははー。あ~あ~、どいつもこいつもあほくせー! インスタもツイッターも馬鹿ばっかだな! (お前もその一人だっつーの! というツッコミお待ちしております。)